失敗から学ぶ ~なぜあなたは融資で行き詰るのか?
前回から「失敗から学ぶ」をテーマにしてコラムを書いておりますが、前回は、私のコンサルティングの経験から「よくある失敗例」を以下3つに分類して、その概要を解説しました。
1. 融資で行き詰まり、前に進めなくなる投資家
2. 資金繰りに窮して首が回らなくなる投資家
3. ストレスで精神的に追い詰められる投資家
今回は、このうち「融資に行き詰まり、前に進めなくなる投資家」について、もう少し踏み込んで解説したいと思います。
投資家が融資で行き詰る原因とは?
そもそも、投資家が融資で行き詰る原因は2つあります。「投資家自身の属性に問題がある場合」と「投資方針に問題がある場合」です。
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投資家自身の属性に問題がある場合
身も蓋も無い話ですが、「元々その人には不動産が買えない」そのようなケースも確かにあります。不動産投資を始めるには、どうしてもある程度の自己資金が必要になります。また、金融機関から融資を受けるためには、どうしても最低限の年収と資産背景の基準をクリアする必要があるのです。また、物件が増えてくると、既存借入の総額も大事なポイントになってきます。各金融機関では、「個人」または「個人の資産管理法人」に対して融資を行う場合、融資上限額というものがあります。資産規模に比して、明らかに借入の額が大きいと、たとえ資産バランス上、評価がプラスであっても融資を断られることもあります。
これらの基準は金融機関によって変わりますが、これらの条件を満たさなければ、そもそも今の段階では融資を受けて不動産を購入することは難しいでしょう。
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投資方針に問題がある場合
さて、こちらのケースは改善の余地があります。まず「投資方針に問題がある」とはどういうことか。一言でいうと、それは「投資家の願望」と「金融機関の願望」のミスマッチです。
実は、金融機関は、それぞれに得意とする物件が分かれます。たとえば、築年数、エリア、構造など、その物件の特徴によって、金融機関が融資しやすい物件と融資しにくい物件が分かれるのです。
また、融資を受ける人の属性についても、やはり得意とするところが変わります。資産背景のある地主さんを得意とするところ、高額所得サラリーマンを得意とするところ、中程度の年収のサラリーマンを得意とするところ、など色々と特色があるのです。
それを知らずに、「自分の属性」を理解せず、「買いたい物件」と「金融機関の得意分野」にミスマッチを起こしてしまうのが悲劇の始まりです。ミスマッチな打診ばかり続けてしまうと、金融機関の担当者にも愛想をつかされるばかりか、物件を紹介してくれる不動産業者にも愛想をつかされてしまいます。
不動産業者に「あの人は融資を受けられない人だ」と認識されると、物件情報を紹介してもらえなくなってしまいます。くれぐれも気をつけていただきたいポイントです。
融資で行き詰ったときの対策
さて、それでは、どのようにすれば投資方針を改善し、融資を受けられるようになるのでしょうか。それは、段階を追って、正しい手順で購入戦略を組み立てることです。
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融資を知る
まずは金融機関の特徴を知ることです。あなたの周りにある金融機関はどんなところがあるでしょうか。試しにリストアップしてみてください。そして、それぞれの金融機関の融資基準を知りましょう。これはひと筋縄ではいきません。そう簡単に融資基準を教えてくれる金融機関などありません。これは、先輩大家さんや不動産コンサルタントに聞くか、セミナーに参加するなどの情報収集が必要です。ただし、注意点が一つ。各金融機関の融資基準はたまに変更されます。たとえば、これまで木造物件に積極的だった金融機関が、急に木造物件への融資から手を引いたり、特定のエリアの物件に融資しなくなったり、など。
このような状況の変化を把握するためにも、融資情報の収集に当たっては、アンテナを高く張って臨んでいただきたいと思います。
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融資から逆算して購入戦略を組み立てる
次に、融資から逆算した「購入戦略の組み立て」です。金融機関の情報を仕入れたら、自分がどこの金融機関を使えるのか、把握する作業に入ります。このときに行うのが「自分のたな卸し」です。「自分のたな卸し」とは、ご自身の年収、資産背景、年収、家族構成などをすべて書き出し、自分の強み・弱みを把握する作業です。分析してみると色々なパターンの方がいます。・年収に強みがあるけれど、住宅ローンが大きくて資産バランスに弱みがある人
・年収はそれほど高くないが、コツコツ貯蓄をしていたため、自己資金に強みがある人
・ある程度自己資金を持っているが、高齢のため、融資期間が短くなりそうな人すべての方にマッチする金融機関が存在するわけではありませんが、自分の強み・弱みを理解した上で、自分と金融機関のマッチングを行い、そこから逆算して金融機関が融資しやすい不動産を探すのです。どの金融機関を使うのか。これのマッチング作業をきちんと行うことができれば、融資を受けられる可能性は格段にあがるはずです。
実は、私のところに相談に来る相談者の多くが、この「融資から逆算して購入戦略を組み立てる」ことを実践していません。そうすると、安易に資産バランスを崩す物件を最初に買ってしまい、それが自分の「弱み」となって次の物件購入に大きく響いてしまうのです。
そのような事態に陥らないよう、初めから使う金融機関を想定して、資産バランス、収入面などの属性を整えながら不動産を購入していくことが大切なのです。この点、これから不動産投資を始める方は、是非とも肝に銘じてほしいものです。
以上、「融資に行き詰まり、前に進めなくなる投資家」について解説してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。「急がば回れ」という言葉もありますが、不動産投資を成功させようと思ったら、正しい知識を身につけるところからスタートすることが重要だということがお分かりいただけたと思います。
次回は、違うパターンの失敗例について解説したいと思います。是非お楽しみに。