不動産投資のリスクをコントロールする~経営に関するリスクとその対策(2)

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不動産コラム 不動産投資のリスクをコントロールする~経営に関するリスクとその対策(2)

不動産投資のリスクをコントロールする~経営に関するリスクとその対策(2)

前回は「経営に関するリスク」のうち、「訴訟リスク」について解説しましたが、今回は「流動性リスク」について解説したいと思います。

「流動性リスク」は、一般の方にとってはなじみが薄いかもしれませんが、実は投資の中でも極めて重要なものの一つです。そもそも「流動性リスク」は、そう頻繁に顕在化することはありませんが、一度リスクが顕在化してしまうと、投資家に大きな損失を与えてしまうのです。

後述しますが、不動産の「流動性リスク」が深刻化したケースとして、リーマンショック後の混乱期があげられます。滅多に起こることではないですが、下手をすると不動産投資の世界から「一発退場」させられる可能性だってあるのです。

以下では、「流動性リスク」に関して、不動産投資家が最低限知っておくべきポイントを解説したいと思います。

「流動性リスク」とその弊害

そもそも「流動性リスク」とはどのようなものでしょうか。「流動性リスク」とは、マーケットでの取引高が少ないため、資産(株式・債券・不動産など)を換金しようと思った時に、すぐに売れなかったり、希望した価格で売れなかったりするリスク、と定義できます。

この換金しづらいことを、専門的には「流動性が低い」=「流動性リスクが高い」と表現します。

世の中には、色々な投資商品がありますが、不動産は「流動性が低い」資産の代表格です。この「流動性が低いこと」から以下2点の弊害が生まれます。

  • 売却(換金)に時間がかかる

    何らかの理由で、もしあなたが早急に現金が必要となった場合、これは非常に困ります。総じて流動性の低い資産は売買相手が見つかりにくいものです。ましてや不動産は一つ一つの金額が大きいですから、買い手も資金の準備には時間がかかります。

    他の投資と比較してみても、株式投資(上場株式など流動性の高いもの)の場合は、市場が開いている時間帯であれば、いつでも売買可能です。受渡日を含めても3~4日程度で現金化することが可能です。

    これに対して不動産は、株式市場のような取引所(東証・大証など)があるわけではありません。すぐに売買の相手を探すことが出来ませんので、不動産仲介会社に依頼するなどして、物件情報を広めて初めて買い手が現れるのを待つことになります。首尾よく買い手が決まったとしても、買い手の資金準備(銀行からの融資等)に少なくとも1ヶ月程度の時間がかかるのが通常です。

    このように、特に資金繰りを考えなければならない経営者の立場であれば、不動産の「流動性リスク」は十分に考慮すべきものだと思います。

  • 安い価格で買い叩かれる

    一般に「流動性リスク」が顕在化するタイミングというのは、往々にして売り手の立場が大変に弱くなります。俗に言う、「買い手市場」です。

    わりと最近では、リーマンショック直後の混乱期が当てはまるでしょうか。ファンドバブルと呼ばれていた頃、不動産ファンド会社はこぞって都心を中心に物件を買いあさっていましたが、リーマンショックで金融界が混乱すると、とたんに不動産関連会社の資金繰りが悪化しました。

    そうすると資金繰りのために不動産を売却することになるのですが、そもそも不動産ファンドが保有する物件の出口は、他の不動産ファンドであることが多いものです(ファンド間取引)。しかし、リーマンショック直後はこのスキームが完全に崩壊しました。

    結局、資金力のある富裕層(個人)やサラリーマン投資家が買いの受け皿になりましたが、金融引き締めが起こる中、融資承認が得られる買い手は少なかったため、完全に「買い手市場」となり物件価格は下落。その結果、収益不動産の利回りは、今では考えられないくらい高水準となったのです。

    このように、売り手に差し迫った事情・背景がある場合には、すぐ売れない=「流動性が低い」ことは、資産価値の下落を招き、非常に大きな弊害をもたらすのです。

余談ですが、流動性リスクは、金融機関や上場企業等の大きな組織にとっては、すぐに経営危機に直結するため、指標やガイドラインを使って、全社(経営)レベルで徹底的にリスク管理を行っています。それほど重要なリスクなのです。

 

投資家が「流動性リスク」で悩むメカニズムとその対策

このように、不動産をはじめとする「流動性の低い資産」には高い「流動性リスク」が内在しているものです。しかし、そもそも不動産投資は流動性リスクが高いことなど、投資家は百も承知のはずです。

にもかかわらず、なぜ投資家は「流動性リスク」の対策を講じずに、みすみす顕在化させて大きな損失を被ってしまうのでしょうか。そこには、2つの要因があると考えています。以下ではその点を考察してみます。

  • 投資家自身が「出口」をイメージする力を持っていない場合

    まず考えられるのが、そもそも投資家自身の力不足です。不動産に内包される「流動性リスク」を意識しないで物件を購入してしまうパターンです。

    これは流動性リスクに限った話ではありませんが、物件を購入するときに、自分がどんなリスクのあるものを購入しているか、まるで理解せずに、思いつきで不動産投資をはじめる人がいます。これは失敗大家さんの典型です。

    一般に市場で売買される量が極端に少ないものは、間違いなく「流動性リスク」が高いと考えてください。例えば、株式については、市場に出回る絶対量や取引量が少なく、人気薄の状態にある銘柄です。

    不動産で言えば、「再建築不可物件(※)」や「借地物件」などは特に流動性が低くなります。融資が受けにくいからです。※ 接道など、建築基準法上の建築要件を満たさない物件で、現況の建物を壊して再建築することが出来ない物件

    流動性の低い物件は利回りが高めになります。しかし、見た目の利回りの高さに釣られて「流動性リスク」の高い物件を買ってしまった投資家が少なからず存在します。そうすると、出口(売却時)に思わぬ苦戦を強いられ、キャピタルロス(売却差損)が激しくなることもあります。

    もちろん、利回りの高い物件に投資することで成功を収める投資家もいらっしゃいますが、逆に「流動性の低さ」故に、売却して手仕舞うことも出来ずに頭を抱えている投資家がいるのも事実です。

    この対策としては、購入の前に出口をきちんと検討する力を身につけることです。出口戦略の詳細は別の機会に改めて解説しますが、流動性の低い物件を買う場合は、とくに出口に注意が必要です。

    初めから売却等の出口を想定する力を身につけ、売却時に苦戦すること織り込んだ買い方をすることで、リスクを緩和することが出来ると思います。

  • マーケットの異常事態により「出口」が見えなくなってしまう場合

    その他、防ぎようが無い事態が起こることもあります。市場が大暴落したり、戦争や自然災害などで突然取引ができなくなったりした場合です。こんなことが起きてしまうと、当初想定していた出口がまったく無くなってしまうため、投資から撤退するにも、大きな損失を覚悟する必要が出てきます。先述のリーマンショックの事例は、まさに典型です。

    先ほどもお伝えしましたが、このようなタイミングで売却(現金化)が必要となった場合、買い叩かれることが常です。根本的な対策・予防策はありませんが、あえて言えば資金繰りに窮するような状況を作らないこと、不動産を焦って売却しなければならない状況を作らないことが予防策といえるかもしれません。

    ちなみに、不動産オーナーが売却を強いられる場面というのは、個人であれば「借入金返済の延滞」や「相続時の財産処分=納税資金の確保」などがあげられると思います。経営者であれば他事業の事業資金の捻出(運転資金等)、リファイナンス(借り換え)が出来ない場合、などが挙げられると思います。

    間違っても、タイミングの悪い時期に売却を強いられないよう、相続対策や事業資金の確保など、予防策を講じておくことを検討しておいてください。

 

以上、今回は「経営に関するリスク」のうち「流動性リスク」について解説しました。普段はあまり意識しないリスクではありますが、とても大事な問題なのでしっかり理解を深めてください。

さて、ここまで数回にわたって「不動産のリスクをコントロールする」と題して「収益性に関するリスク」「資産価値の変動リスク」、そして「経営に関するリスク」を解説してきましたが、概要はご理解いただけたでしょうか。リスクマネジメント(コントロール)は、とても奥が深いので、すべてを解説するのは難しいですが、まずは不動産投資にどのようなリスクが内在しているのか、その一端をご理解いただければと思います。

さて、次回から、「失敗から学ぶ」をテーマにして、数回にわたって、具体例から分析できる失敗要因とその対策等について解説していきたいと思います。是非ご期待ください。

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