副業サラリーマンが不動産屋になれるか?
(質問)
以前、ブログかメルマガで、サラリーマン大家が規模が大きくなって不動産屋さんになってしまった、という話を聞いたことがあります。最初は小型の物件からスタートして、転売を繰り返すうちにどんどん規模が大きくなって、しまいには業者になってしまったそうです。副業の規模が拡大して本業になったという成功談で、とてもワクワクします。私は今サラリーマンですが、不動産投資を志しています。やるからには、そこまで規模を大きくしたいと思うのですが、どうにも「不動産屋さん」には、少しダークな感じや、業績が不安定なイメージがあります。実際のところ、サラリーマンが副業で不動産屋さんになることは可能なのでしょうか?
(回答)
ご質問ありがとうございます。副業からスタートして将来的に不動産屋さんになるのと、最初から副業で不動産屋を営むのはちょっと違いますが、まず「不動産屋さんとは何か」というところからスタートだと思います。おっしゃる通り、有名大家さんの中には、副業から始められて、ついにはご自身で不動産業を起業されて大成功を収めている方もいらっしゃるようです。ただ、一口に「不動産業」と言っても「不動産賃貸業」「不動産管理業」「不動産仲介業」など様々です。
ですが、おそらくここでご質問いただいている「不動産屋さん」とは、自分で不動産を転売して売買差益で儲けている人のことを指しているのではないかと思います。いわゆる不動産転売ビジネスです。この手法はうまく行けば相当に儲かります。しかし、一度市況が悪くなったりすると、破産が相次ぐこともあり、副業としてはかなりリスクの高い投資になることも注意が必要です。鍵はキャピタルゲインと出口です。
そこで今回は「不動産屋さん」をテーマに、副業サラリーマンが知っておくべき法令上のリスクと、キャピタルゲインと出口の関係について解説したいと思います。
不動産屋のビジネスモデルとは?
そもそも不動産屋さんはどうやって儲けているのでしょうか。安く買って高く売り差額で儲ける。売却までの保有期間中は賃料収入で儲けている。この2つに尽きます。スマートに言えば、保有期間中のインカムゲインと、売却時のキャピタルゲインが収入源です。
でも、一般的な副業サラリーマン投資家と違うのは、長期的な投資ではなく、短期的な投資として考えているため、短期的に物件を売却(転売)することです。ですから、大事なのはキャピタルゲイン中心の考え方。比重が高いのはキャピタルゲインの方です。
キャピタルゲインを考えるうえで、何よりも重要なのは出口の確実性です。資金も基本、短期資金として準備するケースが多いので、出口で失敗すると資金繰りに窮します。
さらに短期間で物件を回転させるため、物件の仕入れの能力が必要です。また仕入れの時には、急に多額の資金調達も必要となるため、ある程度の資金的な体力が必要です。一般のサラリーマンが副業レベルで実践するには難しいと思います。
なお、購入した物件を右から左に流すだけではなく、物件購入後、リフォームや空室率の改善などを通じて、バリューアップをして、買い手が融資を受けやすい状態にしてから高値で売却するケースが多いかもしれません。このような形態の場合、特に不動産業界を未経験の投資家さんが副業で取り組むのは簡単ではないでしょう。
また、本当に短期転売目的の場合は、「第三者のためにする契約」、いわゆる中間省略取引の形態で、移転登記費用などを節約して、短期で手早く売買差益を得る方法もあります。これは本当に「業者」の仕事です。
不動産屋さんに宅建免許は必要?
必要です。前述の通り、不動産屋さん(不動産の転売ビジネス)は、うまく行けば相当儲かります。経験やセンスのある人は、安く物件を仕込んで、売り時をにらんで高値で売り切り、手早く利益を確定させながら資産を拡大しているのです。本当にお金儲けが上手だな、と感心してしまいます。
事実、知人のサラリーマン大家さんの中にも不動産屋としてセミプロの域まで達している人もいます。プロと言わないのは、宅建免許を持っていないのと、ギリギリ法規制にかからない範囲で転売を行っているからです。
ここで注意が必要なのが宅建業の免許。不動産と転売目的で反復継続して取引する行為はまさしく不動産屋さんのお仕事。宅地建物取引業として業法の規制対象になる可能性が高いでしょう。宅地建物取引業を行うには、行政から免許を受けなければならないのです。
ちなみに「業」と判断されるのは、不特定多数に反復継続して宅地建物の取引にかかわる行為です。年に1回くらいのペースであれば、あまり問題にならないかもしれませんが、それ以上のペースで転売を続けると、さすがに「業」としてみなされる可能性が高いでしょう。立派な不動産屋さんです。もし継続的に転売を続ける気持ちがあるのであれば、宅建免許は必要とお考え下さい。
転売を考えるなら出口と融資の知識は必須
さて、前述の通り、不動産屋さんにとって出口は最重要です。仕込んだ物件が売れないと、資金繰りで詰まってしまうからです。それもきちんと利益が出るように売却しなければなりません。仕込んだ物件を誰が買ってくれるのか?ファミリー用の区分マンションであれば、住宅ローンを組んで買ってくれる一般家庭。中古の1棟アパートであれば、おそらくはサラリーマン投資家でしょう。
・次の買い手は誰か?・その買い手はどんな金融機関を使うのか?・その金融機関はどんな条件で融資するのか?
これでほぼ出口が見通せます。もちろん、市況の変化によって多少の変動はあるでしょうが、大筋では読みを外さないはずです。そう、出口は融資次第。不動産相場が崩れる時は、決まって不動産への融資が厳しくなる時です。ですから、不動産融資の現状と、将来の融資の展望を持つことが、転売を目的とした不動産投資には不可欠となるのです。
そして、これは何も転売目的の不動産屋さんに限ったことではありません。一般サラリーマンが副業で不動産投資をする場合も、この考え方はとても重要なのです。買う前に、買った後の展開(出口)を想定しておくこと。出口を迎えた時に、きちんとトータルで利益が得られている目算がなければ、不動産を買ってはいけません!
副業で安定を求めるなら長期保有が前提
(質問)
ありがとうございます。何となくぼやっと不動産屋さんのビジネスが分かった気がします。不動産を頻繁に取引する場合、やっぱり法律の規制があるのですね。免許を取るとなると、かなりハードルが高いような気がします。実際、副業で取り組むとなると難しいですよね。違ったやり方の方が良いのでしょうか。副業向きのやり方がどういうものなのか、教えていただけるとありがたいです。
(回答)
副業向きのやり方ですね。了解いたしました。誤解なきようにお伝えしますが、不動産屋さん流の転売ビジネスというのも、副業として全面的にダメなわけではありません。冒頭にあったように副業からスタートして成功した例もあります。年に一回くらいずつ不動産を転がして資金を増やしている人もいらっしゃいます。
しかし、サラリーマンが副業として、初心者からスタートする場合、段階を踏むのが一般的です。少しずつ物件を増やし、売却の経験も積んでいけば、将来的にもっと規模を拡大して、不動産屋として開業するのはありだと思います。何しろ不動産屋さん流のビジネスは大きく稼げるチャンスがあるからです。
ただ繰り返しますが、今まで不動産取引に従事していなかった人が、副業とはいえ、いきなり不動産屋さんとして起業するのは難しいでしょう。
・年に何度も転売を繰り返す場合、宅建業の免許が必要です。・良い仕入れルートが必要です。・物件のバリューアップに取り組んだりする手間と費用と時間が必要です。・業績は融資環境など、外部環境に左右されます。・結構な余裕資金は用意しなくてはいけません。
とても一朝一夕で、かつ副業・片手間でやろうとしてもうまく行かないはずです。ですから、しばらくは物件を運用しながら修行を積むことをお勧めします。
副業としてスタートするなら、キャピタルゲイン重視よりも、どちらかというとインカムゲイン重視。まずは家賃収入からのキャッシュフローを見込める物件で、かつキャピタルロス(物件の減価)が少ない物件を購入して、賃貸経営の実績を積みながら、一つひとつキャッシュフロー源を増やしていく活動をする方が一般的かと思います。
副業で時間的にも金銭的にも余裕を持ちたい、と言う方にとっては、長期保有を前提とした物件選びをしたほうが負担が少ないと思います。長期保有物件の選び方については、また稿を改めますね。副業という身分は、本業の収入が確保できた状態で物件を買うことができるので、実は不動産投資には有利な状態です。うまく副業の身分を使って、資産を拡大していきましょう。